洋上風力発電事業を、自治体・漁業者・企業の共同事業で行うべき理由



 洋上風力発電事業を行うにあたって、国の公共の財産である海域を特定の私企業が優先利用するのは、社会的公平性に欠けることと考えられます。また、これまで海を利用してきた漁業者からは、自らの権益を損ねる可能性への不安や、発電事業者が得る経済的利益への不満も生じてきます。このような不公平感は、漁業者のみならず、その地域に住んでいる住民にも生じる可能性があります。

 そこで発電事業者である企業に必要になるのは、発電事業を、その地域の自治体や漁業者などとの共同事業として進めることです。これには例えば、企業・自治体、漁業者などとの共同出資による第三セクターによって発電事業を運営することなどが考えられます。

 風力発電事業は毎年の収入が安定しているので、収入の変動が大きな漁業者にとっては、発電事業に投資することによって長期で一定量の安定収入を得られるメリットがあります。また発電所の所有に対する満足感や、自らが毎日見て監視できる安心感もあると思われます。漁業者にとっては良いチャンスとも言えますし、漁業者が主体的に事業を誘致しても良いかもしれません。

 また、自治体が事業参画することによって、観光産業や地方銀行、地元企業などとも協働しやすくなり、地域経済をより活性化させる効果があると考えられます。このような事業方法は、平成31年4月に施行された「海洋再生エネルギー発電設備の整備に係る海域の利用の促進に関する法律(再エネ海域利用法)」の考え方にも合ったものと言えます。

 洋上風力発電事業の方法として、地域の生活者にとって納得感のあるWinWinな事業方法をとることによって、より円滑に事業を進めることが可能と考えられます。